■ 第4日 / 12月18日 ■

この日の旅程はかなり単純で、ロープウェイで阿蘇山に登って戻って来るだけです。

駅 名
時 刻
列 車
線区名
熊本
08:26発
71D
あそ1号
豊肥本線
阿蘇
09:29着
阿蘇駅前
09:56発
 
熊北産交バス
阿蘇山西駅
10:29着
11:03発
 
九州産業交通
阿蘇山ロープウェー
火口西
11:07着
11:46発
 
阿蘇山西駅
11:51着
12:10発
 
熊北産交バス
阿蘇駅前
12:35着
阿蘇
13:06発
434D
豊肥本線
肥後大津
13:53着
13:58発
1456M
熊本
14:30着
熊本駅前
20:33発
 
熊本市電
2号線
健軍町
21:10着
22:05発
 
神水橋
22:10着
22:24発
 
熊本駅前
22:54着

熊本に戻ってからは、この間長崎で借りて味を占めた楽チャリを利用して熊本城を回り、その後市電にも乗りました。

8時過ぎに駅に出ると、「つばめ1号」と「有明10号」がやって来て慌ただしく発車して行きました。熊本は客車とディーゼルカーの車両区が駅に併設されていて、ホームからもそれが見えます。すぐ近くには軌道検測車のマヤ34が停まっています。これは線路の状態を検測する為の事業用車で、自身には動力がないので他の動力車に牽かれて走ります。動力車は機関車でも電車でも対応します。

この日の最初の列車は71D「あそ1号」。車両はキハ185系で、国鉄末期に四国に配備されてそのままJR四国が受け継いだものの、新型車両の導入に伴って余剰となり、JR九州が買い受けたそうです。共用になっているトレインマークの通り、現在は「あそ」と「ゆふ」で使われています。

9時7分発の立野にはスイッチバックがあります。立野に入った列車は進行方向を切り替えて後ろ向きに数分間走り、また折り返して進むというZ形のスイッチバックになっていて、ここから外輪山の中に入って行きます。写真は2度目の方向転換を終えた所です。九州にはここと肥薩線の大畑、真幸の3駅にスイッチバックがあり、そちらには明日行く予定になっています。

外輪山の内側は意外な程に平坦で、外輪山と阿蘇山の間はかなり広々としています。お陰で阿蘇山がよく見えます。

9時29分、阿蘇駅に到着。ここは元々坊中という名前だった駅で、今でも地区や道には坊中という名前が多く付けられています。ホームに降り立つと肌寒く、やはり標高が高い所に来たのだな、と感じます。

阿蘇山に登るバスの発着場は駅のすぐ近くにありました。入口にはハングル文字が大書してあって、韓国人観光客が多い事を伺わせます。事実、この時も韓国語で喋っている人達が数人中にいました。

ところが中に入ってバスの切符を買っているとこんな掲示が。阿蘇山西駅までは行けるのですが、火山性ガスが発生していてそこから火口西までのロープウェイが運休しているとの事。どうした物かと思いましたが、状況が良くなるかも知れないのでバスに乗る事にしました。

放牧されている牛や馬があちこちに見える中、バスはどんどん登って行きます。観光路線らしく、車内では案内のテープが周りを色々と説明してくれます。これは米塚という名前の丘で、真中を貫く筋を村の境界線にした所から「山分け」という言葉が生まれたという説があるそうです。

バスの乗客は9人で、内訳は新婚旅行らしき韓国人の若いカップル、母娘風の韓国人のおばさんと若い女性、日本人の初老の夫婦、車輪付きの小振りなトランクを持った日本人のおばさん、一人旅の日本人30代男性、そして僕でした。トランクのおばさんは麓のキャンプ場、初老の夫婦は阿蘇火山博物館やオルゴール響和国がある草千里で降りたので、阿蘇山西駅まで行ったのは6人でした。

10時29分、阿蘇駅から約30分で阿蘇山西駅着。阿蘇の駅前では肌寒い程度でしたが、標高1,000mを超えるここははっきりと寒いです。

阿蘇山西駅は1階が土産物屋とバスの待合室、2階がロープウェイの発着場とレストランになっていました。しかしロープウェイは未だ動いていません。阿蘇火山博物館までは歩いてもそれほど遠くなさそうだったので、そちらに行く事も考えながら食事にします。

レストランのおばさんに入口で食券を買いながら訊いてみると、風向き次第ではロープウェイは動くとの事なので、その言葉に一縷の望みを託しつつ食べたのがこのだご汁セット。「だご」は多分「だんご」が訛ったのだと思いますが、要するにすいとんのような感じで、温かく、野菜も豊富に入っていて美味しかったです。これに高菜のおむすびが付いています。

食べながらロープウェイ乗り場の方を見ていると、30人以上はいると思われる団体客が大挙して乗り場に向かって行きました。どうもロープウェイが動くようです。

だご汁を食べ終えて外に出ると窓口が開いていたので往復切符を買い、団体客用と個人客用に分かれた改札へ。個人客の方には僕とあと数人しかいませんでしたが、韓国人観光客でいっぱいの団体の方はこの後にもかなり並んでいました。

ゴンドラは標高1,150mの阿蘇山西駅から1,258mの火口西駅まで約4分で移動します。中では添乗員のお姉さんの声以外は全く日本語が聞けませんでした。阿蘇山西駅にあった掲示によると、火口西駅の気温は朝9時の時点で-1度だったとの事。それを知っていたせいか、かなり寒いです。

さすがに活火山の火口の目の前らしく、火星のような景色のあちこちにトーチカのような避難壕があります。左に写っている人は自転車旅行をしているらしく、ここに来るバスで追い抜いたのがもう追い付いています。

火口に近付いてみます。風向きによって入れるエリアを区切っているらしく、未だ入れない場所が結構ありました。17年前に来た時にはこんなしっかりした柵なんてあったかな、と思いながら火口を見てみますが、ガスが濃くてほとんど見えません。韓国人の団体客は始めの内は元気良く記念写真を撮ったりしていたものの、しばらくすると寒さのせいかどんどん駅の方へ引き返して行き、10分も経つとほぼ誰もいなくなってしまいました。

風向きによって景色が全く変わるのが楽しくて20分位あちこち見て回っていたのですが、ここでDimage Xiに異変が起きました。寒さのあまりバッテリが放電しなくなり、中に電気はあるのにすぐバッテリ切れの表示が出てしまうのです。仕方ないので1つはカメラに入れ、1つは手袋の中で暖めて交換しつつ使ってその場を凌ぎました。

そうしている内にまた風向きが変わり、一瞬だけ火口が見えました。

さすがに寒くて辛くなって来たので下山する事にします。ここのロープウェイにはゴンドラが2つあり、こちら側が「ぎんが」、もう1つが「すいせい」とブルートレインのような名前が付いています。今回乗ったのは行き帰り共に「ぎんが」でした。

12時10分発のこのバスで阿蘇へと戻ります。乗客は9人で、来た時と全く同じ面子でした。麓で降りたトランクのおばさんや草千里で降りた初老の夫婦もいつの間にか登って来ています。まるで団体ツアーに参加したような不思議な気分です。発車してすぐ、運転手さんがドアを開けて草千里から歩いて来たらしい家族連れに「ヴォルケイノ、オープン」と言っていましたが、よく一目で外国人だと判ったなと感心しました。

12時35分、定時より5分早く阿蘇到着。駅周辺を一回りしてから待合室に入りましたが、フランス語を喋るバックパッカーの白人カップル、韓国人の家族連れ、どこの訛りだか判らないけれども不思議な英語を喋る白人男性と日本人女性とその息子の家族連れがいて、更に併設されている食堂にも北欧系風の白人家族がいるという阿蘇山の上より更に国際色豊かな状況になっていました。

駅舎の中はなんとなくウエスタン調になっていますが、これは'88年から走っている「SLあそBoy」に合わせた物のようです。今は経年劣化と台風等の影響でなくなってしまっていますが、以前はホームにも板張りの塀があったそうです。

阿蘇からは13時6分発の434Dで帰ります。特急は14時54分発の「あそ4号」までなく、そこまで待ってしまうと後のスケジュールが厳しくなるので普通列車です。車両はキハ40系とステンレス製のキハ31の混結でした。

またスイッチバックを通って13時32分頃に立野着。ここで下りの73D「あそ3号」と行き違うので発車は41分になります。ホームにはスイッチバックの案内看板もあります。

この立野からは元国鉄高森線で今は第3セクターの南阿蘇鉄道が出ているので駅を撮っていると、背後から「そのカメラ、レンズが出ないんですねえ」と声を掛けられます。振り向くと丸顔の人の良さそうな運転士さんがにこにこしながらこちらを見ていました。

しばらくの間運転士さんとデジカメ談義に花を咲かせていると、「あそ3号」がやって来てすぐに出て行きます。ちょっとだけでしたが立野駅も見られたし、ここには普通列車で来た方が楽しいかも知れません。

13時53分、肥後大津に到着。ここからは電化区間なので15時58分発の1456Mに乗り換えます。この車両は九州では珍しいオールロングシートで、僕は初めて巡り合いました。それでも1人分づつ独立した背当てが付いていたりで、首都圏の車両よりずっと乗り心地が良いのはさすがJR九州だと思います。

熊本には14時30分に着きました。「SLあそBoy」はこのホームから出るらしく、ウエスタン調の看板が立っています。

ホテルには戻らず、そのままみどりの窓口へ行って楽チャリの券を買います。普通の切符と同じ券なのは解りますが、何故か禁煙マークが入っているのが不思議です。駅舎に入っているレンタカー屋で借りた自転車本体はこの間長崎で借りたのと同じ物でした。

楽チャリのおまけで貰った地図を見つつ、熊本城の方へと向かいます。やはりこちら側が中心部のようで、広くて長いアーケードもありました。とりあえず食事を摂りたいのでふらふら探していると、桂花の本店に行き当たったので入ります。ここの歌舞伎町支店には中学生位の頃から何度も行きましたが、他の店に入るのは初めてです。歌舞伎町にはない定食類も色々あり、目移りして困りました。当然ですが、味はやはり桂花の味でした。旨かったです。

楽チャリで来ていなかったら結構辛かったであろう坂道を登り、熊本城に着きました。入口にはコスプレ(?)のお兄さんが2人いて、記念撮影に応じています。ここでも韓国人が多く、日本人は半分いるかいないかでした。

それにしても、重機もない時代に石垣まであるこんな大規模な建造物をたったの7年で建ててしまえたというのは驚異的です。

大阪城と違い、ここの天守閣にはエレベーターがありませんでした。内部の展示を見つつ一番上まで登ると、ここで唯一築城当時のまま残っている宇土櫓が見えます(天守閣は'60年に復元された物)。また、逆側ではなにやら復元工事中で、雑然としていました。

天守閣の出口はこんな殺風景な場所でした。もう少し雰囲気を壊さない工夫をした方が良いのではないかと思いますが.....。

宇土櫓の公開時間は16時半までで、あと15分位しかないし、窓も閉め始めているから諦めるしかないかな、と思いながら眺めていたら、入口にいたおじさんが招き入れてくれたので見学します。入ってみてあまりの風情に驚きました。この宇土櫓は1607年には出来上がっていたらしく、さすがに400年間の年輪を感じさせてくれます。

物凄い急角度の階段。所々に置いてある電灯がまた雰囲気を盛り上げてくれます。薄暗いお陰で露出が稼げなくてブレてしまうのですが、ストロボを焚いてしまうと全く違った絵になってしまうので仕方ない部分もあります。

一番上から天守閣を見るとこんなです。宇土櫓という名前は宇土城の天守閣を移設したという説があった事から付いた物ですが、修復工事の際に行われた調査から元々ここに建っていた物であると立証されたそうです。

熊本城の白眉と言える宇土櫓を出ると16時半。楽チャリは16時45分までしか借りていないので急いで駅へと戻ります。しかし川と線路が交錯する熊本の街は意外と道が判り辛く、迷ってしまいました。楽チャリ自体の営業時間は17時までで、借りる時にレンタカー屋のおじさんが17時まで乗っていていいですよ、と言ってくれていたのですが、散々迷った揚げ句に駅に着いたのは17時10分でした。

写真はようやく道が判って走っていた時に並走していた熊本県警のラッピング路面電車。かなり忠実にパトカーの塗装を再現しています。横にはピーポ君ではなく、とぼけた顔の熊(ゆっぴー号と書いてあったので、多分ゆっぴーという名前なのでしょう)が描かれていて意外に思いましたが、考えてみればピーポ君は警視庁のキャラクターであって警察庁のではないので納得しました。

ホテルに戻ってまずはBookOffのサイトに行き、この辺りに支店があるか調べます。以前は見掛けたら行く、という程度でしたが、最近は能動的に調べて宮脇本のチェックに勤しんでいます。

18時半過ぎに常連さんで賑わう1階のレストランへ行き、¥1,000定食を頼みます。テーブルの上は今日も満艦飾で、メニューはあじのフライ、野菜炒め、豚肉コンニャク巻煮、肉うどんでした。左にあるのはせっかく本場に来たのだから、という事で頼んだ焼酎お湯割。するとなんとタコの刺身が付いて来ました。普通ならこれで一品になる量で、お通しのレベルを超えています(しかも、どうもサービスのようでした)。どの料理もやはり美味しく、特に肉うどんはしっかりとした出汁の味がして最高でした。

しかし慣れない焼酎を呑んだせいで結構酔いました。酒量はかなり多い方なのですが、度数は日本酒やワインが限界で、それ以上のハードリカーになるとからっきしなので、味は美味しいと思いつつも苦戦しました。

少し部屋で休んでから出掛けます。目的地は2系統ある市電の終点の1つ、健軍町です。最近造られたらしいレトロ調の電車に約40分間揺られて21時10分に着きました。目指すBookOffの支店は停留所の目の前にあり、ここで「汽車との散歩」と「汽車旅12カ月」を発見。釣り用語の爆釣という所でしょうか(釣りの趣味はありませんが)。この時にはここで大戦果を挙げた事が翌日に響くとは気付いていませんでした。

健軍町は結構栄えているようで、市電の停留所付近にはこんな商店街もありました。しかし、まだ22時前だというのに開いているのはパチンコ屋だけでした。

22時5分発の電車で移動します。先程の大収穫で気を良くして健軍町から4つ目の神水橋(くわみずばし)という所の近くで見掛けた古本屋に寄りましたが、ここはマンガ中心だったので何もありませんでした。

神水橋からは最終電車に乗って22時54分、熊本駅前に到着。やはり今日も呑み足りないので店を探します。

入ったのは駅の目の前のこの店。おかみさんが1人で切り盛りをしているようでした。熊本名産の馬刺しや辛子レンコン等のセットを頼みましたが、残念ながら辛子レンコンは品切れ。代わりに馬肉料理が出て来ました。

隣でWindows XP Embeddedがどうとか言いながら管を巻いているスーツ姿のおっさん2人組を横目で見つつ、埋め込み用途ならTRON以外に何があるんだ(当の坂村さん〜仕事で一度会いましたが、とても人当たりの良い人でした〜は最近変な事をしているようですが)と思いながら呑みました。

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